
裾の裏側もチェック!「良い」貼り付け加工を見極めるための三つのポイント
仕上がりの「良い」貼り付け加工とは
貼り付け加工の仕上がり具合の良し悪しは、当然ですが、どれだけ「貼り付け」た感じがでていないかの一点に全てがかかっていると言えます。それはつまり、言い方は少し悪いですが、本体と裾パーツの継ぎ目をいかに「ごまかして」見えないようにするかということです。
ここでは、当店が貼り付け加工を施す際に気を付けているいくつかの基本的なポイントを示して、どのようにその「ごまかし」を行っているかを見ていきたいと思います。
「良い」仕上がりのポイント
1.継ぎ目は消えているか

まずは「継ぎ目」の問題に関してです。左の写真は、かつて採用していた方法で仕上げた貼り付け加工です。貼り付け加工の手順は前回のブログで紹介しました。基本的には本番のステッチ入れまで手順は同じなのですが、以前のやり方ではそのステッチを継ぎ目のキワに入れることで、目の錯覚を利用して「ごまかす」というものでした。ですのでよく見ると、ステッチのすぐ上に黒い線が走っているようにして継ぎ目が残っていることがお分かりいただけるかと思います。それに対して右の現在の貼り付け加工では、継ぎ目に直接「落としミシン」としてステッチを入れていくので、ほぼ完全に継ぎ目が目立たなくなっていることが見て取れます。
ただし、デメリットもあります。「落としミシン」は継ぎ目に字のごとくステッチを落としていくので、それが沈んで目立たなくなりがちです。仕上げ時にミシン目を金槌でたたいて平らにし、それを浮かび上がらせることでほとんどの場合問題は解消できるのですが、色が合わない等の理由で、太い糸(20番手)ではなく30番手(チノパンなどに使用されている糸)のものを使わざるを得ない場合には、本番のステッチを入れる前に、地色同色もしくはそれよりも少し濃い色の糸を「落とし」て継ぎ目をならしておくと、ステッチの沈みをある程度抑えることができます。
さらに、以前の貼り付け加工は、裾のパーツの側にステッチが入りしっかり押さえられるため安定しているのですが、現在のそれではそうではないために、洗濯などすることで裾側が浮いた状態になり、ステッチが少し隠れてしまうという現象が生じます。そのような場合は、ひと手間ですが、ステッチ部分にアイロンをかけてもらえれば元の状態に戻ります。
2.インシーム・アウトシームの接合部を合わせる

次に注意すべきポイントは、インシーム、アウトシームの線が、本体と裾のパーツの継ぎ目でずれずにぴたりと合っているかどうかということです。これは作業的に簡単そうに見えて意外と難しいので、よくずれたままで(しかも大幅に)仕上がった状態のものをしばしば見かけます。正直に言って、左右で合計四か所全てを完全に合わせることは非常に難しいのですが、せめて「よく見ればずれているような気もする」という程度には近づけなければならないと考えています。
3.裾裏も元の状態に戻す

最後に裾の裏側の仕上がりについて見てみようと思います。ここでのポイントは、表側だけでなく裏側も元あったステッチ跡にミシン目が入っているかどうかということです。貼り付け加工はそれを行う過程で裾のステッチを一度解き、その後再度入れ直しをするのですが、その際に表側からステッチを入れるので裏側は直接見ることが出来ません。ですので裏側のステッチ跡は実際どこにあるのかおおよそでしかわからず、勘に頼るしかありません。作業的にいって、ここが最も難易度の高い場面であることは間違いなく、そのため全くかけ離れたところにステッチが入れられてあるケースをよく見かけます。ただ、ロールアップをして着用される可能性もあることを考えれば、やはり裏側の仕上がりも気が抜けないことは当然です。作業に慣れてくれば、指の腹で縫い代の段差を探りながら、大体の検討をつけて縫うことができるようになるのですが、それでもやはり、特にインシーム、アウトシームの生地が重なり盛り上がっているような部位はよく外してしまい、やり直しをすることも多々あります。
最後に
当店では現在採用している貼り付けの手法が、デメリットもあるとはいえ、継ぎ目を消すという意味では今のところ最良のものであると考えております。しかし、その「ごまかし」方については現状、各リペア・リフォームショップにより考え方が違うため、それに基づいた様々な仕上げ方がなされてもいます。どのポイントを重視するかによって、作業内容も変わり仕上がりも変わるので、一概にどの貼り付けが最も「良い」というように断言することはできません。ただ、どのような仕上げであろうとも、それが貼り付けた感じをできるだけわからないようにすることを目指している限り、上で示したチェック項目は適用することが出来ますので、お客様にとっての「良い」仕上がりを見極めるための参考にしていただければと思います。